正しくない決算書は壊れた羅針盤と同じ。どこに向かっているのかわからない

仕事柄、様々な会社の決算書を(深く)見ることが多いですが、業績が悪化し資金繰りに窮している会社は、ほぼ正しくない決算(不適切な処理、本来してはいけない処理をしている)をしています。

そうしないといけない言い分もあるとは思いますが、薬物(表現が不適切化もしれませんが、)と同じで一度手を出すと元に戻すのが大変です。

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なぜ正しくない決算をしてはいけないのか

直感的にも決算は正しい方がいいし、できることなら正しい決算をしたいと考えていらっしゃる方が大半かと思います。

けど、様々な理由があって歪めてしまっているのが現状です。

歪めている理由

  • 業績が苦しく赤字となりそう又赤字が継続しそう。赤字決算を出し、続けてしてしまうと銀行から新規の融資はできないし、そもそも融資の継続が難しいと言われた。だから利益が出ているように調整した。
  • 赤字決算をすると取引先からの信用にかかわり、取引の継続ができないかもしれないという恐れがある。だから利益が出ているように調整した。
  • 物件売買等で多額の利益が計上され、このままでは多額の税金が発生する見込みであるため、架空の経費や経費の水増しを行い、利益を少なくするような調整をした。

など、歪めている理由にも利益を多くするものと、利益を少なくするものがあります。

それぞれの影響

利益を多くした場合

利益を多くしているので、正しい決算をした場合より、税金の支払いが多くなります。本来支払わなくてもよい税金を支払っています。

業績が苦しくなっている→資金繰りも苦しい→なのに税金を多く払っている→より資金繰りを圧迫

金融機関からの融資がないと会社がそもそも立ち行かなくなる場合もあり、そのような会社をいくつも見てきましたが、どこまでいっても本業を立て直すしかなく、それをしないまま(できないまま)ずるずると続けていると最終的にはすべてを明らかにしないといけなくなり、金融機関、取引先等、様々な方面に迷惑をかけることに。

利益を少なくした場合

意図的に利益を少なくしているため、正しい決算をした場合より、税金の支払いは少なくなります。ただし、合法的な範囲の節税ではなく、架空経費の計上や経費の水増しをしてしまうと明らかに違法ですので、重加算税等のペナルティが発生する可能性があります。

もったいない

決算書は会社の羅針盤。羅針盤が歪んでいては、今どこのいるのか、どこに進めばいいのかがわからなくなります。

なぜ正しい決算をすべきか

上記のように様々な理由により決算を歪めてしまうケースがありますが、ここでは、意図的に利益を多くする調整をしたケースを想定して記載します。利益を少なくするケースは悪いことには変わりありませんが、利益が出ています。

問題は利益が出ていないにも関わらず、意図的に利益を多くするよう調整しているケースは、①本業がうまくいっていない、②本業はこれまで通りだが副業で赤字になった(本業とは別という意味。例えば不動産業でない会社が収益物件も保有し賃貸しようとしたが、思うようにうまくいかず)場合が考えられます。

②本業はこれまで通りだが副業で赤字になった場合は、あくまで副業での失敗が響いたのであって、本業はこれまで通り利益が出ているのであれば、金融機関や取引先も悪い評価はしないはずです。なので②の場合で決算を歪めてしまっては、本業も本当は業績が悪いのではないか捉えられる可能がありますので、きちんと説明すべきです。

①本業がうまくいっていない場合は、本来この場合こそきちんと決算をして、何がうまくいっていない原因なのかを明確にし、対処する必要があります。当然自社だけで解決できる問題だけでなく、業界全体が苦しい(市況が悪い)場合もありますが、業界全体が苦しい苦しいといっても何もしなければ、その苦しい業界でより苦しくなってきます。言い訳はできますが、言い訳をしても利益は出ません。何とかしないといけないですし、何とかするのが社長です。従業員は最悪辞めればいいですが、借入金の連帯保証人になっている社長は辞めたくても辞めれません。

じゃどうすれば

①の場合できちんと決算をして赤字となった場合、金融機関にはきちんと説明すべきです。原因はなんなのか、今後どのようにして利益を出していくつもりなのか。

そのためには苦しいですが、蓋をするのではなく、自社ときちんと向き合い、原因はなんなのか、どこがネックとなっているのか、どうすればいいのかを考え抜かないといけません。そうして出てきたことに対して真摯に対処するしか方法はないのです。

そして、そこまで考え、対処しようとしている会社を金融機関は簡単に見放しません。金融機関も会社がつぶれてしまっては利息はおろか、元本が回収できなくなるため、リスケ(リスケジュール。条件変更。一定期間元本の返済を減少)をし、その期間で本業を立て直す時間を与えてもくれます。

そうなる前に

①の場合は本業がうまくいっていない場合ですが、そうなる前に対処したいというのが本音だと思います。

そのためには正しい決算をするだけではなく(決算は通常年に一度だけ)、タイムリーに会社の数字を見て、時点修正する必要があります。

会社の数字をタイムリーにみるために経理処理をタイムリーにする必要があります。

自社で経理処理している場合

経理処理がたまっている場合はためずに処理しましょう。経理処理は確かに面倒で、楽しくない作業かもしれませんが、ためると余計やる気が起きず、またたまってしまいます。
タイムリーに会社の数字をみるためには、タイムリーに経理処理するしかありません。

経理処理を毎日しているのであれば、比較的タイムリーに会社の数字を見ることができます(社長が自分で経理処理している場合はなおさら)。

 

顧問税理士に記帳代行してもらっている場合

記帳代行してもらい、数字の報告頻度を月一度にしてもらいましょう。

領収書を税理士に送りっぱなしにして、年に一度しか報告がないのであれば、会社の数字を見るのは年に一度となります。また法人税の申告期限は決算日後2か月後(3月決算なら5月末が期限)なので2か月も経過しています。
その状態ではタイムリーとは言えませんので、理想は毎月。契約にもよると思いますので、3か月に一度でも年に一度よりはましです。

数字が見えるようになったら

経理処理されたものをまずは年次、月次で並べて比較しましょう。そうすると去年より、去年の同月より増えたか減ったかが見えます。まずは数字として見えるようになることがスタートです。

増えた減ったが見えたら、なぜ増えた減ったかを深堀りしていきます。それを繰り返すことで根本原因が見えてきます。原因がわかればそれを取り除くためには何をしなくてはいけないのかを決めて、実行に移します。

文章で簡単に書くな!とおしかりを受けそうですが、簡単ではないことは百も承知です。
私も事業再生支援等で会社の決算書、様々な管理資料(内部資料)から分析し、引っかかったところは会社の方にお聞きし、何が原因なのかを追究しますが骨の折れる業務ですし、原因が分かったからといって、すぐに対処方法が見つかるわけでもありません。ですが、それをしないといつまでたっても会社は良くならないのもわかっていますので、面倒なやつが来たと思われても根気よくどうするかを考えることで少しでも実行に移してもらうよう努力します。

結果的に会社が自ら実行され改善方向に進まれた会社を数多く見てきました。

数字に興味をもつ

会社の動きは必ず数字に表れます。現場感覚も当然大事(感覚が正しいことも多い)ですが、数字との整合性も取っておく必要があります。数字が感覚と大きくずれていることもあり、この時は数字が間違っていることも多いです。逆に数字を見ることで、そこまでは分かったいなかったということもあるかと思います。

もったいない

正しい経理処理、正しい決算は会社が今どこにいるのか、今後どのように進むべきかを示す役割もあります。ただ単に、金融機関や取引先との関係、税金面だけのためと位置付けるのは非常にもったいないです。

決算書は会社であれば必ず作成しないといけないもの。どうせ作成するなら何かの役に立つように有効活用しないともったいないです。


【編集後記】

昨日は経営改革のサポートをさせていただいている会社で一日作業。
会社の方もどうすれば売上があがるか、経費が削減できるかを考えてくださり本当にありがたかったです。

 

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