平成30年改正 事業承継税制とは?認定支援機関の関与が必要なものもある

平成30年度の税制改正のうち、事業承継税制について記載します。

中小企業にとって事業承継は、会社の発展にも衰退にもつながる一大事。
「事業を成功して50点、承継に成功して100点」とも言われるように、事業だけでなく、承継にも成功して初めて100点満点の経営者とされています。
後継者がいる場合でもその承継が難しい中、最近は後継者がいない中小企業が増えており、国をあげて事業承継を進めるために、発生する税金が軽減される内容となっています。

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なぜ事業承継が注目されているのか

今回の税制改正でもそうですし、新聞や雑誌等でも事業承継関係が注目されています。
その理由は、

  1. 中小企業の経営者が高齢化(今後10年間で70歳(平均引退年齢)を超える中小企業の経営者が約245万人)
  2. そのうち約半数が後継者未定

とされているからです。
このまま放置すると後継者不足の中小企業は廃業を余儀なくされ、堅調な利益を上げる会社も廃業、同時に雇用も失われることとなります。

これに歯止めをかけるため、事業承継税制により次世代経営者への事業承継を加速させるため創設、拡充されました。

事業承継税制改正の概要

(A)贈与・相続(既存制度の拡充)

今後5年以内に承継計画(仮称)を提出し、10年以内に実際に承継を行うものが対象となります。概要は以下となります。

①後継者が売却・廃業を行った際、その時点での株価を基に納税額を計算し、減免可能
②対象株式数の上限を撤廃(2/3→3/3(100%))、納税猶予割合を80%→100%に拡大
③近年の人で不測の状況に鑑み、雇用平均8割を満たせなかった場合でも猶予継続を可能に
④複数の株主から複数への後継者への事業承継についても対象者を拡大

(B)売却・M&A(新設)

M&Aによる事業承継を支援対象に追加されました。概要は以下となります。

①経営力向上計画(認定支援機関の関与が必須)の認定を受けた事業者に対して
②再編・統合を行った際に係る登録免許税・不動産取得税を軽減

(A)贈与・相続(既存制度の拡充)

税制適用の入口要件を緩和_負担を最小化

  • 対象株式数の上限(改正前は3分の2まで)を撤廃し、全株式が適用可能に。
  • 納税猶予割合(改正前は相続税の猶予割合は80%)が100%に拡大。

つまり、事業承継時の税負担がゼロとなります。

  • 対象となる取引についても、改正前は一人の先代経営者から一人の後継者に対する承継のみであったことに対し、複数の株主(先代、配偶者、その他同族など)から、代表者である後継者(最大3人。長男、次男、長女など)への承継も対象に。

株式を引き継ぐ後継者は代表権を有する必要があります。またそれぞれが議決権割合10%以上を有し、かつ議決権保有割合上位3位までの同族関係者に限る。

とはいえ、これまで一人の先代経営者から、一人の後継者のみが対象であったのに対し、複数株主からも承継も対象となったことはありがたい改正かと思います。先代代表者が株式の100%を保有している場合には改正前でも対象でしたが、配偶者も保有している場合もそれなりにあるため、今回の改正では(先代の)配偶者からの承継も対象内となりました。

税制適用後のリスクを軽減_将来不安を軽減

  • 後継者が自主廃業や売却を行う際、承継に伴う税金(贈与税や相続税)が課税されます。今回の改正により廃業時や売却時の評価額を基に納税額を計算することになりました。改正前は、単に承継時に猶予されていた税額(贈与税や相続税)が課税されることとされていました。

つまり、承継以降、経営環境の変化により経営が悪化した場合も、そのタイミング(自主廃業や売却時)での評価額を基に納税額が計算されるので、承継当初の株価より下がっている場合は納税額も減免されます。

  • 雇用維持について、5年間で平均8割以上の雇用を維持することが要件とされていましたが、改正により、未達の場合でも税金(贈与税や相続税)の猶予が継続可能に。(ただし、経営悪化等が理由の場合、認定支援機関の指導助言が必要)

(B)売却・M&A(新設)

後継者不足のため事業承継が行えない場合、M&Aにより経営資源や事業の再編・統合を図ることにより事業の継続・技術の伝承等を図ることも事業承継の一部です。

今回の改正でM&Aによる事業承継を支援対象に追加することで第三者への事業承継を後押しされることになりました。

経営力向上計画(仮称)に基づくM&A

認定支援機関の支援により経営力向上計画を主務大臣に申請し、認定を受けることにより、M&Aを通した事業承継において発生する登録免許税・不動産取得税が軽減されます。

不動産を多く持つ事業の場合、所有者が変更することにより発生する登録免許税や不動産取得税が重くのしかかります。一方、事業譲渡ではなく合併の場合には通常の売買より登録免許税率がこれまでも低く設定(通常の売買:2%。合併0.4%)されていましたが、今回の改正でさらに低く(0.2%)なるため、コスト面での軽減措置が図られた形となります。

まとめ

贈与・相続については、拡充され、M&Aについては制度が新設され、中小企業の事業承継を加速させるための制度が拡充されています。

事業承継は、株式や事業を承継する”まさにその”タイミングだけでなく、後継者選定や後継者育成、後継者のための体制作りも必要になる、いわば会社全体の問題です。そのため、1年や2年でどうにかなる問題もなく、育成も含めると10年計画で考えるべき問題です。

そのため、現在60歳の経営者でまだまだやれる!とお考えでも、今から承継を意識、準備しだして、10年後の70歳で後継者に引継ぐことが可能になります。

何でもそうですが、早め早めの準備が必要です。

※巳波会計事務所は認定経営革新等支援です。経営革新等支援機関に認定されました!

関連記事①:中小企業の多くが廃業か?出口戦略を伝えるのも税理士の仕事。聞かれてからではなく投げかけていく
関連記事②:事業承継なのか継承なのか。大事なのは想い。自分でレールを引くこと


【編集後記】

本日はクリスマス。我が家にもサンタが来たようで、希望のおもちゃが届き子どもたちは朝から大喜びでした。
子どもたちは一緒に遊ぶ気満々(子供たちは冬休み)でしたが、今日は平日のため断念。今日帰ってから遊ぶことになりそうです。

 

 

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平成30年改正 事業承継税制とは?認定支援機関の関与が必要なものもある” に対して1件のコメントがあります。

  1. 時田和彦 より:

    今回の改正には大変関心があります。私もまだ良く理解していないのですが、これは免除ではなくただ猶予だと経理士は断言します。そうでしょうか。贈与された後継者が死亡したときには免除となるという認識ではいけないのでしょうか、また、先代が亡くなったときにはその株も相続財産に含まれるとありますが結局はその時にはその分の相続税は払うということになるのですか、それならば贈与税を払って生前に贈与するか売買したほうが良いようにも思われます。ゆえに経理士は猶予だと言うのでしょうか。今回5年以内に申請すればその次の代にも適用できる制度ですか。これはコメントではなく質問になってしまいましたね。国のやることですからいずれは取りますよという単なる思わせぶりの繰り延べ政策でなければ良いのですが。もっとよく勉強してみることにします。

  2. 時田和彦 より:

    コメントは匿名にてお願いします。

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