「「学力」の経済学」の中室牧子先生の講演会に参加。勉強も当然大事だが自制心ややり抜く力の方が重要!

先日「「学力」の経済学」の著者 中室先生の講演会が地元で開催されたので参加してきました。

学力の経済学

教育と経済学。
教育は数字だけでは語ることができない分野ですが、様々な、しかも長期(試験後40年間も追跡調査している試験もある!)にわたる比較試験のデータをもとに、「教育」というものを科学的根拠(エビデンス)から論じる著書は、子育て世代と言われる私にはすごく刺激的で、子育てしていく上での一つの考え方となりました。

著書のうち、また講演会でこれは!と感じたものについて記載します。

教育という話

教育について議論になるとき、「私個人としては~」とか「私の経験上では~」とか「私のこどものころは~」といった風に、”私”が主人公で、その経験や考え方を基に語られることが多いです。

一方経済学を語るときは、公表されている外部データや統計等の科学的根拠(エビデンス)を基に語られます。
この違いだけでもへぇ~そういえばそうだなと思いましたが、教育という目に見えないもの、けれども皆さんそれぞれの経験があり、そこに想い(小学校から附属の学校で長期的な視点での教育が最良だ、とか、いやいや高校までは公立でいろんな友達がいる環境が対応力を伸ばすのだとか)があるからこそ、エビデンスではなく、私見からの意見が中心となってしまいます。

著書の中にエビデンスの階層が示されていました。(P.164)
最も信頼性が高いのが「ランダム化比較試験」でランダムに分けた二つのグループのうち、一つのグループは仮説を実施し、何も対処していないもう一つのグループとの差を確認する方法です。逆に最も信頼性が低いのが「論説や専門家の意見や考え」であり、まさに教育はこの「論説や専門家の意見や考え」により多く語られてきました。

読書をすると学力が向上する?

よく、読書をすると学力が向上する。だから本を読みなさいと子どもに言うと聞きます。私もそうだったよう記憶しています。
けど、本当にそうでしょうか。読書をすると学力が向上するという、原因と結果が明確なのであれば、読書をすると学力が向上するという期待ができます。(読書→学力)
そうではなく、単に学力が高い子どもがその延長で、読書もよくするだけであるのならば、いくら読書をしても学力が向上するという結果は期待できないことになります。(学力→読書。読書≠学力)

この読書をすると学力が向上するということに対しては科学的根拠(エビデンス)がないのですが、これまでの経験や思い込みで読書をすると学力が向上するかのようなことを多く聞きます。これも私見であり、先ほどの例でいくと「論説や専門家の意見や考え」ですね。

ペリー幼稚園プログラム

詳細は著書をご参照いただければと思いますが、子供の教育に関して、もっとも費用対効果がいいのはいつなのか?ということに対して、このペリー幼稚園プログラムで就学前教育が最も効率がいいことが検証されました。

就学前教育

就学前教育を受けた子とそうでない子では、教育を受けた子の方が27歳時点での持家率は”高い”であり、40歳時点での年収は”高い”であり、さらに犯罪率は”低い”といった分析結果となっています。

年齢 項目 ペリー幼稚園プログラムを受けた子
27歳 持家率 高い
40歳 年収 高い
犯罪率 低い

つまり、就学前教育を受けることによりその後40歳までその効果が持続することが検証されています。

では何がそこまで異なるのか

就学前教育を受けた子とそうでない子で何が違ったかというと、パッと頭に浮かぶのが、就学前教育により頭が良くなったからでは?と思うのではないでしょうか。私のそう思っていました。

著書によると、その頭の良さをIQの高さと考え、その後の影響をあらわしたデータがあります。それによると頭の良さ=IQの高さ(認知能力)は、やはり教育を受けている最中もしくはその後1~2年間は就学前教育を受けた子の方が高いという結果が出ていますが、小学校入学(6歳)とともに差が小さくなり(優位性が少なくなり)、8歳前後で差がなくなっています。

つまり、就学前教育を受けた子の影響がその後40歳になるまで持続する理由は、頭の良さ=IQの高さ(認知能力の高さ)ではないことがこれで証明されました。では何が影響しているのでしょうか。

それは非認知能力とされています。

非認知能力って?

ペリー幼稚園プログラムにより、非認知能力の獲得差がその後の人生に影響を与えているとされています。

では、非認知能力とは何でしょうか。

学術的な呼称 一般的な呼称
自己認識 自分に対する自信がある、やり抜く力がある
意欲 やる気がある、意欲的である
忍耐力 忍耐強い、粘り強い、根気がある、気概がある
自制心 意志力が強い、精神力が強い、自制心がある
メタ認知ストラテジー 理解度を把握する、自分の状況を把握する
社会的適正 リーダーシップがある、社会性がある
回復力と対処能力 すぐに立ち直る、うまく対応する
創造性 創造性に富む、工夫する
性格的な特性 神経質、外交的、好奇心が強い、協調性がある、誠実
source:「学力」の経済学(中室牧子)P.87 図18

この中で最も重要な非認知能力は「自制心」と「やり抜く力」とされています。

「自制心」は「マシュマロ実験」が有名で、子どもの目の前にマシュマロを1つおき、大人が部屋に戻ってくるまで食べずに待っていられれば、もう1つマシュマロを食べられるが、我慢できずに食べてしまうとその1つでおしまいという実験です。どちらが経済性があるかを考えると、大人が戻ってくるまで我慢してもう1つマシュマロをもらうことですが、なんと約3分の2は我慢できずにマシュマロを食べてしまったという結果が出ています。この実験で我慢できた子たちと我慢できなかった子たちをその後追跡すると、彼らが高校生になったときにはかなりの差が生じていたといいます。

また「やり抜く力」はGRIT(グリット)とも呼ばれ、「非常に遠い先にあるゴールに向けて、興味を失わず、努力し続けることができる気質」と定義されています。

弁護士や公認会計士などの国家資格取得に向けて数年単位の勉強をすることもこの「やり抜く力」が要求されるのではないでしょうか。合格し、晴れて弁護士や公認会計士になった人がいる一方で、途中で勉強をあきらめた(経済的な理由等により諦めきれなかった方を否定しているわけではありません)方も多くいます。当然資格を取得した方はそうでない方より、100%優れているわけでも、その後の収入が100%高いわけではありませんが、やると決めたことをどれだけ遠くてもやり抜く力がその後の人生においても影響すると思います。(こちらは完全に私見です。著書でいうところの最も信頼性が低い「論説や専門家の意見や考え」です)

といっても認知能力を鍛えないのはまちがい

こちらは著書の記載ではありませんが、このペリー幼稚園プログラムでは認知能力の持続はないが、プログラムにより非認知能力の獲得が改善され、その後の人生に影響を及ぼすものであるとされています。しかし、だからといって認知能力、勉強することやスキルを身につけることをないがしろにしていいわけではないと私は考えます。

自制心ややり抜く力が抜群に秀でていても、やはり目に見える認知能力で推し量られる側面も多くありますし、学歴がものをいう分野があったり、そもそも学歴がない(例えば医者になりたければ、医学部に入らないといけない)とできないことも多くあります。

その中で将来自分がしたいこと、できることの幅を狭めないためにも認知能力の向上はするべきだと考えます。

 同じ大学卒の中でも年収格差は広がっている

この講演の中でも言われていたのが、最近は同じ大学卒者で年収格差が広がっているというものでした。

同じ大学卒といことは、入学時の偏差値=認知能力が同じという前提にたつと、仮に認知能力だけがその後の人生に影響を及ぼすというものであれば、その後の年収も同じになるはずです。しかし、結果は違う。つまり認知能力だけではなく、先ほどのペリー幼稚園プログラムでいう非認知能力の獲得差がその後の人生にも影響を及ぼしていると考えるのが現状納得感が得られます。

やはり、認知能力だけではなく、非認知能力を獲得し鍛えることが重要と考えています。ただ、これも現時点(2017年)での見解であり、もしかすると20年後には違った検証結果が出ている可能性もあります。

まとめ

教育は私見が多く入る分野ですが、その中でも科学的根拠(エビデンス)に基づいた結果で教育を語る著書は私の教育のバイブルとなりそうです。

どうしても自分が受けてきた教育しか知らないため(私は小学校から高校まで公立、大学は私立なので、小学校から私立大学の附属の教育を知りません。会計士のまわりには附属出身者が結構います。そしてその子どもには同じように自身の母校の附属に入れておられます)、自分が受けてきた教育をベースに考えてしまいますが、科学的根拠(エビデンス)に基づく考え方は意識して子育てをしていきたいと思います。


【編集後記】

今日右上の親知らずを抜きました。ものの5分程度で痛みもなく抜けました。来週左上の親知らずを抜く予定です。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください